はじめに―言葉の「適切さ」を測る難しさ
Table of Contents
−- はじめに―言葉の「適切さ」を測る難しさ
- 研究の背景と筆者たち
- 研究の方法―オンラインテストで理解力を測る
- 主な発見―発話行為習得の「でこぼこ」
- 発話行為によって習得度に大きな差がある
- 習熟度が上がれば理解力も向上する
- 学習環境の影響は限定的
- 日本の英語教育現場への示唆
- 語用論指導の必要性
- 発話行為の段階的導入
- AI技術の活用可能性
- 留学の効果を過大評価しない
- 関連研究との対比
- Taguchi(2007a, 2022)の研究との関連
- Schauer(2006)との対比
- Roever et al.(2014)、Koike(1996)との一致点
- 学術的考察と批評
- 研究の強み
- 限界と今後の課題
- 方法論的貢献
- 理論的含意
- おわりに―言葉の「場面力」を育てる
「谢谢(ありがとう)」という言葉を、いつ、誰に、どのように言うべきか。文法的には正しくても、場面にそぐわない使い方をすれば、相手を戸惑わせたり、場合によっては失礼になったりします。こうした言葉の「適切な使い方」を扱うのが語用論という分野ですが、外国語学習においては、文法や語彙の習得以上に難しい課題とされています。
本稿で取り上げるのは、Hong Kong教育大学のJing JinらによるInternational Journal of Applied Linguisticsの2025年掲載論文”Assessing pragmatic comprehension competence in Chinese as a second/foreign language: From the perspective of speech acts in Chinese”です。この研究は、中国語を第二言語または外国語として学ぶ成人学習者88名を対象に、発話行為の理解能力を詳細に調べたものです。発話行為とは、謝罪や依頼、約束といった、言葉を通じて行う行為のことを指します。
