はじめに―なぜ今、この論文が重要なのか

英語の授業でChatGPTを使う学生が増えています。作文の宿題にAIの文章をそのまま貼り付ける、英語の文法問題をAIに解かせる、さらにはリサーチペーパーの参考文献をAIに生成させる―こうした光景は、もはや日本の大学や高校でも珍しくなくなりました。便利なツールを使いこなすことは悪いことではありません。しかし、それが「使いこなす」ではなく「頼り切る」になったとき、何かが失われていくのではないでしょうか。そういった素朴な疑問に、学術的な裏付けを与えてくれるのが今回取り上げる論文です。

Chunpeng Zhai、Santoso Wibowo、Lily D. Liの三名によって2024年に発表された “The Effects of Over-Reliance on AI Dialogue Systems on Students’ Cognitive Abilities: A Systematic Review”(Smart Learning Environments誌掲載)は、AI対話システムへの過度な依存が学生の認知能力―具体的には意思決定力、批判的思考力、分析的思考力―に与える影響を系統的に検討した研究です。著者たちはオーストラリアのCQUniversity(セントラル・クイーンズランド大学)の工学・教育部門に所属しており、AIと教育の接点に関する研究を継続的に行っています。この論文はPRISMA(Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses)ガイドラインに従って実施された系統的レビューであり、ProQuest、IEEE Xplore、ScienceDirect、Web of Scienceという四つの主要データベースから最終的に14本の論文を選定・分析しています。