研究の背景と問いの意義

英語を教えるとはどういうことか。語彙を増やし、文法を定着させ、四技能を伸ばす。長年にわたって日本の英語教育は、そうした「言語能力の習得」を中心に据えてきました。しかし近年、世界の英語教育研究の潮流には、もう一つの視点が加わっています。それが批判的思考、すなわちCritical Thinking(CT)です。

インド・ヴェローア工科大学(Vellore Institute of Technology)英語学科のArthi, M.P.とGandhimathi, S.N.S.が2025年に発表した論文 “Research Trends and Network Approach of Critical Thinking Skills in English Language Teaching – A Bibliometric Analysis Implementing R Studio”(Heliyon, 11, e42080)は、この「批判的思考×英語教育」という領域における2012年から2022年の研究動向を、計量書誌学(bibliometrics)という手法で体系的に分析した意欲作です。データ数は238本の査読論文。ScopusとWeb of Scienceという二大学術データベースからの抽出に始まり、R studioのBiblioshinyというツールを用いて、引用回数、著者、所属機関、キーワード共起、テーマの変遷といった多次元的な情報を可視化しています。

計量書誌学と聞いて「難しそう」と感じる方もいるかもしれませんが、イメージとしてはこうです。膨大な論文群を、手作業ではなくコンピュータが地図を描くように整理し、「どの研究者が中心的な役割を果たしているか」「どの国で研究が盛んか」「どんなキーワードが一緒に登場するか」といった全体像を俯瞰する方法です。森を木の単位ではなく、衛星写真のように鳥瞰する感覚、と言えばわかりやすいでしょうか。本論文はまさにその手法を使い、CTとELT(English Language Teaching)という二つの領域の交叉点を分析しています。