論文が問いかけること
「批判的思考力が伸びた」という結果は、学習研究でよく見かける言葉です。テストの点数が上がった、事前・事後比較で有意差が出た、という報告は枚挙に暇がありません。ところが、実際に学習者が課題に取り組んでいるとき、頭の中で何が起きているのかは、ほとんど明らかにされてこなかったと言ってよいでしょう。「批判的思考力が伸びた」というのは、六つの下位スキルすべてが均等に伸びたということなのか、それともある特定のスキルだけが応答したのか。そもそも、課題をこなす過程で、それらのスキルは同時に、並行して働いているのか。今回紹介するのは、そんな問いに正面から向き合った一本の質的研究です。
Xue Hu、Shaidatul Akma Adi Kasuma、そしてFeng Liuによる本論文 “Critical Thinking Subskills in Project-Based EFL Learning: Uneven Salience and Conditional Activation”(Frontiers in Psychology, 2026)は、中国の中高一貫校(いわゆる中外合作学校)に通う高校3年生12名を対象に、異文化間プロジェクト型課題における批判的思考の展開プロセスを探ろうとした意欲的な試みです。著者のXue Huはマレーシア国立大学(Universiti Sains Malaysia)の大学院に所属し、主指導教員であるShaidatul Akma Adi Kasumaは同大学の言語・リテラシー・翻訳学部の研究者です。共著者のFeng Liuは吉林工程技術師范学院に在籍しており、中国国内のEFL教育に通じた立場からこの研究を支えています。筆者らの所属がマレーシアと中国にまたがっている点は、この研究の異文化的視点とも自然に響き合っています。
