研究の背景と著者について

英語教育の現場で長年働いてきた人ならば、「授業中に生徒がただ黙って板書を写しているだけ」という光景に、一度ならず心を痛めたことがあるのではないでしょうか。教師が一方的に説明し、学習者はそれを受動的に受け取るだけという構図は、特にアジアの英語教育現場ではいまだに根強く残っています。今回取り上げる論文は、そうした状況に真正面から向き合い、「社会的構成主義」という教育理論が読解授業における批判的思考力の育成にどれほど貢献できるのかを実証的に検討した研究です。

著者はHa Van LeとLong Quoc Nguyenの両氏で、ベトナム・ホーチミン市にあるFPT大学の英語学部に所属しています。Le氏はベトナムにおける批判的読解や批判的思考に関する研究を継続的に発表しており、同大学のEFL(外国語としての英語)教育における教授法改善に取り組んでいる実践的な研究者です。Nguyen氏もLe氏と共同で語彙習得や社会的構成主義に関する研究を進めており、本論文はその延長線上に位置づけられます。この論文は2024年6月にFrontiers in Education誌に掲載されました。ベトナムという特定の教育文化的文脈を持つ研究ですが、その知見は日本の英語教育にも十分に応用可能なものを含んでいます。