批判的思考力を育てるとは、どういうことか

英語教育の現場にいると、「批判的思考力を養いましょう」という言葉を耳にする機会が増えてきたと感じる方も多いのではないでしょうか。学習指導要領の改訂や大学入試改革の流れの中で、日本でも「思考力・判断力・表現力」が重視されるようになり、単に英語の文法や語彙を教えるだけでは不十分だという認識が広まっています。しかし、批判的思考力を実際にどう育てればよいのか、その具体的なメカニズムについては、現場の教師にとって依然としてわかりにくいままであることも多いでしょう。

今回取り上げるのは、2023年12月にFrontiers in Psychology誌に掲載された、Fu, Ding, Nie, and Zaighamによる論文 “How Does Self-Efficacy, Learner Personality, and Learner Anxiety Affect Critical Thinking of Students” です。著者のうちFu、Ding、Nieの3名は中国・湖北工程大学外国語学院に所属し、Zaighamはパキスタンのコムサッツ大学イスラマバード校マネジメントサイエンス学部に所属しています。中国のEFL(英語を外国語として学ぶ)環境を舞台にしながら、EFL学習者の批判的思考力の発達を左右する心理的・認知的要因を社会認知理論(Social Cognitive Theory、以下SCT)の枠組みから実証的に検討した意欲的な研究です。

日本もまた、英語が外国語として学ばれるEFL環境である点で、この研究の問題意識は非常に身近なものとして響きます。本稿ではこの論文の内容を丁寧に読み解きながら、その学術的意義と日本の英語教育現場への示唆を考えていきたいと思います。