研究の背景と問題意識
英語を外国語として学ぶ環境(EFL環境)において、「話したい」という気持ち、すなわちWillingness to Communicate(WTC)は、長年にわたって研究者たちの関心を集めてきました。どんなに文法知識があっても、どんなに語彙を覚えても、実際に口を開こうとする意欲がなければ、コミュニケーション能力は育ちません。これは、日本の英語教育の現場でも誰もが肌で感じてきた問題です。中学・高校・大学と長年英語を学んでいるのに、いざ外国人を前にすると黙り込んでしまう、という経験を持つ日本人学習者は少なくないでしょう。
そこに近年、新たな変数が加わってきました。人工知能(AI)です。ChatGPTをはじめとする生成AI、音声認識を使った発音矯正アプリ、AIと会話練習ができるチャットボットなど、英語学習の場にAIが急速に浸透しています。こうした状況を受け、Zhang、Nie、Fan、Liuの4名による研究チームが2025年に発表したのが、本論文”Exploring the Dynamics of Artificial Intelligence Literacy on English as a Foreign Language Learners’ Willingness to Communicate: The Critical Mediating Roles of Artificial Intelligence Learning Self-Efficacy and Classroom Anxiety”です。Behavioral Sciences誌に掲載されたこの研究は、AIリテラシー(AIL)がWTCに与える影響を、AI学習自己効力感(ALSE)と外国語教室不安(FLCA)という二つの心理的変数を介して分析したものです。
筆者のZhangは淮南師範大学外国語学院、Nieは中国政法大学外国語学院、Fanも淮南師範大学、Liuは蘇州大学外国語学院にそれぞれ所属しており、中国の複数の大学にまたがる研究チームによる共同研究です。研究対象となったのは中国の安徽省にある4つの高等教育機関の英語非専攻の学部生517名で、AIを活用した英語スピーキング授業に参加していた学習者たちです。参加者は音声矯正、語彙学習、自動翻訳、AIとの会話練習など、さまざまな形でAIを日常的に使用していました。
