はじめに―「便利さ」の代償を問う

ChatGPTが世界に登場したのは2022年11月のことです。あれからわずか数年で、英語の授業風景は確実に変わりつつあります。日本の大学でも、学生がレポートの草稿をAIに作らせ、教員がそれを見抜けずに困惑するといった話はもはや珍しくありません。英語教育の現場にいる方なら、「AIをどう使わせるか」「使わせないのか」という問いに、一度ならず悩んだことがあるのではないでしょうか。

そうした時代的文脈のなかで登場したのが、Liu Jing、Ahmad Johari Bin Sihes、Lu Yeの三名による論文 “How do generative artificial intelligence (AI) tools and large language models (LLMs) influence language learners’ critical thinking in EFL education? A systematic review”(2025)です。マレーシア工科大学(Universiti Teknologi Malaysia)とYibin University(中国・四川省)の研究者によるこの論文は、生成AIとLLMがEFL(外国語としての英語)学習者の批判的思考(Critical Thinking、以下CT)に与える影響を、PRISMA(Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses)という信頼性の高い系統的レビューの枠組みを用いて分析したものです。対象としたのは2022年から2025年にかけて発表された15本の研究で、Web of Science、Scopus、ERIC、ProQuest、Google Scholarという五大データベースを横断して選定されています。

この論文が問うのは、ひとつの根本的な問いです。「AIは私たちの代わりに考えてしまうのか、それとも私たちが考える力を引き出してくれるのか」。この問いは、テクノロジーと教育の交差点に立つすべての人に向けられています。